目覚めたら、社長と結婚してました
「あの、今日はありがとうございました」
「こちらこそ。是非また飲みに来てね」
「柚花ちゃん、またね」
「はい、島田さんもありがとうございます。社長も、お疲れ様です。お先に失礼します」
会社仕様で一応、彼にも挨拶する。社長の反応を待たずに私はそそくさとお店を後にした。
別世界から帰ってきたみたいに薄暗いフロアの廊下をエレベーターを目指して突き進む。そして、呼び出しボタンを押そうとしたそのときだった。
「おい」
『え』というのは声になったのか、ならなかったのか。うしろを振り向けば社長が面倒くさそうな顔でこちらを見ていた。
「な、なんでしょうか?」
問いかけてすぐに、彼がここにいる意味を悟る。
「社長がこちらにいらしたこと、絶対に誰にも話しませんから。今日は失礼な態度をとってすみませんでした」
「そうじゃない。本を貸してやる」
一瞬空耳を疑い、目が点になる。言葉の意味を理解し、すぐさま私は首を横に振った。
「そんな、かまいませんよ!」
「なんだ。お前の本好きってその程度か」
つまらなさそうに言い放たれた言葉に、私はピシッと音がするほど固まった。不細工を承知で顔が引きつる。
「……言いますね。社長に気を使ったわけじゃありません。自分で探して手に入れます。“欲しいものは自分で手に入れてこそ価値があると思うんです”」
「“限られた時間の中、くだらない価値観でチャンスを失うことほど馬鹿なことはない”だろ」
私は思わず目を大きく見開いて硬直した。社長の切り返しにだ。
「こちらこそ。是非また飲みに来てね」
「柚花ちゃん、またね」
「はい、島田さんもありがとうございます。社長も、お疲れ様です。お先に失礼します」
会社仕様で一応、彼にも挨拶する。社長の反応を待たずに私はそそくさとお店を後にした。
別世界から帰ってきたみたいに薄暗いフロアの廊下をエレベーターを目指して突き進む。そして、呼び出しボタンを押そうとしたそのときだった。
「おい」
『え』というのは声になったのか、ならなかったのか。うしろを振り向けば社長が面倒くさそうな顔でこちらを見ていた。
「な、なんでしょうか?」
問いかけてすぐに、彼がここにいる意味を悟る。
「社長がこちらにいらしたこと、絶対に誰にも話しませんから。今日は失礼な態度をとってすみませんでした」
「そうじゃない。本を貸してやる」
一瞬空耳を疑い、目が点になる。言葉の意味を理解し、すぐさま私は首を横に振った。
「そんな、かまいませんよ!」
「なんだ。お前の本好きってその程度か」
つまらなさそうに言い放たれた言葉に、私はピシッと音がするほど固まった。不細工を承知で顔が引きつる。
「……言いますね。社長に気を使ったわけじゃありません。自分で探して手に入れます。“欲しいものは自分で手に入れてこそ価値があると思うんです”」
「“限られた時間の中、くだらない価値観でチャンスを失うことほど馬鹿なことはない”だろ」
私は思わず目を大きく見開いて硬直した。社長の切り返しにだ。