目覚めたら、社長と結婚してました
「本当に、私のせいでごめんなさいね」

　今度は敏子さんに謝られ、彼女の顔は沈痛そのものだった。逆にそんな顔をさせてしまい、申し訳なくなってくる。

「そういえば、ご主人とは仲直りできたのかしら？」

「仲直り？」

　心配そうに尋ねられたものの、私は首を傾げた。敏子さんは痛々しく微笑む。

「ええ。あなたご主人と喧嘩して、自分が悪かったから彼の好きなものを作って仲直りするために、これから買い物に行くんだって話していたから。私のせいでそれどころじゃなかったでしょう」

　敏子さんの瞳は不安そうに潤んでいた。

　喧嘩？　私と社長が？　どうして？……駄目だ、思い出せない。とはいえ事情は話せないし。

「だ、大丈夫です。むしろ喧嘩どころじゃなくなって、いつも通りですよ」

　私の言葉に敏子さんは安堵の表情を浮かべ、口元の皺がくっきりとなる。

「よかった。でも、そうよね、夫婦ですもの」

　なにかがチクリと胸に刺さった。

「柚花」

　伯母に話しかけられ、意識を切り替える。伯母はさっきまでの表情とは打って変わって、子どものようにいきいきとしていた。

「すごい偶然よ！　玉城さん、怜二さんの知り合いなんですって」

「驚いた。天宮って苗字だから親戚かなにかかと思ったら、まさか怜二の奥さんだったなんて」

　ふたりの視線を一気に引き受け、私は反応に困った。その状況で先に言葉を続けたのは玉城さんだ。
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