目覚めたら、社長と結婚してました
「柚花さんの、結婚したって話は彼からも聞いていたんです。この状況で言うのもなんですが、ご結婚おめでとうございます」

 まさかのお祝いの言葉に私は小さく頭を下げる。そこで玉城さんが伯母に向き直った。

「ご主人にもお詫びを、と思っていましたが連絡先などは聞かなくても大丈夫みたいですね。柚花さんにはお体に障ってもなんですから、今日は失礼します」

「すみません、お気遣いありがとうございました」

 玉城さんと敏子さん、それぞれに再度謝罪の言葉を述べられる。病室が静かになり、伯母が長く息を吐いた。

「あなたもとんでもない人を助けたわね。玉城さん若くして会社を経営しているらしく、とんでもない額のお見舞金を仰ってきたから丁寧にお断りしておいたわよ。まあ、あとは怜二さんにお任せしましょうか」

 自分が階段から落ちた原因が判明してホッとしたような、思い出せない気持ち悪さにムカムカするような。

 なにより敏子さんとのやりとりで私の心は落ち着かなかった。

「明日、退院だけどどうする? 自宅に送りましょうか? それともしばらくうちに来る?」

「えっと……」

 不意に伯母に明日のことを問われ私は目をぱちくりとさせる。伯母は軽く頷いた。

「怜二さんとも相談しておいてくれる? うちはどちらでもいいから。ただ、お仕事忙しいみたいだから迷惑になってもね」

「そう、だね」

 私は視線を落として静かに答えた。
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