目覚めたら、社長と結婚してました
「そういや明日、退院だろ? 都合つけて迎えに来る」
「い、いえ。大丈夫です。伯母に話していますし。その、お忙しいでしょうから」
不意打ちの話題に私は真面目に答えた。そこで自分の言葉に昼間の伯母の台詞が脳裏を過ぎる。
『ただ、お仕事忙しいみたいだから迷惑になってもねぇ』
迷惑……。
私はぐっと唇を噛みしめた。
「私は大丈夫ですから。それに、そのまましばらく伯母のところで厄介になろうと思います。こんな状態ですし」
小さく言い放ち社長の返事を待つ。すると彼は軽く肩をすくめた。
「そうだな。俺のことを忘れているお前としては、知らない男同然の俺と一緒にいるよりそっちの方がいいだろ」
なにも傷つく必要なんてない。言い出したのは私で、社長は私の意思を尊重して気遣ってくれただけだ。それなのにどうしてこんなにも胸が痛むんだろう。
考えるよりも先に睡魔が襲ってくる。瞼が重たくて、うとうとしはじめる私に社長は寝るように言ってきた。おとなしく従い、ベッドに背を預けて視界の端に彼を捉える。
彼と距離ができたことに、なんだか寂しくなって右手を少しだけ浮かした。すると社長は優しく手を握ってくれた。伝わってくる体温に気持ちが落ち着いていく。
「ありがとうございます……怜二さん」
目を閉じて、消え入りそうな声で彼の名前を呼ぶ。さっきよりもきちんと呼べたかな。そばに彼の気配を感じるのに、もう目を開けられない。かすかに唇に温もりを感じて私の意識は沈んでいった。
「い、いえ。大丈夫です。伯母に話していますし。その、お忙しいでしょうから」
不意打ちの話題に私は真面目に答えた。そこで自分の言葉に昼間の伯母の台詞が脳裏を過ぎる。
『ただ、お仕事忙しいみたいだから迷惑になってもねぇ』
迷惑……。
私はぐっと唇を噛みしめた。
「私は大丈夫ですから。それに、そのまましばらく伯母のところで厄介になろうと思います。こんな状態ですし」
小さく言い放ち社長の返事を待つ。すると彼は軽く肩をすくめた。
「そうだな。俺のことを忘れているお前としては、知らない男同然の俺と一緒にいるよりそっちの方がいいだろ」
なにも傷つく必要なんてない。言い出したのは私で、社長は私の意思を尊重して気遣ってくれただけだ。それなのにどうしてこんなにも胸が痛むんだろう。
考えるよりも先に睡魔が襲ってくる。瞼が重たくて、うとうとしはじめる私に社長は寝るように言ってきた。おとなしく従い、ベッドに背を預けて視界の端に彼を捉える。
彼と距離ができたことに、なんだか寂しくなって右手を少しだけ浮かした。すると社長は優しく手を握ってくれた。伝わってくる体温に気持ちが落ち着いていく。
「ありがとうございます……怜二さん」
目を閉じて、消え入りそうな声で彼の名前を呼ぶ。さっきよりもきちんと呼べたかな。そばに彼の気配を感じるのに、もう目を開けられない。かすかに唇に温もりを感じて私の意識は沈んでいった。