目覚めたら、社長と結婚してました
「とにかく今の私は自分の目標を達成することに忙しいんです。……時間は限られていますから」

 仕事にも少し慣れ、二十六歳を前に私は自分のやってみたいことを実行することにした。バーへのデビューもそのひとつだった。

「バーに行ってみる、耳にピアスの穴を開ける、夜遊びしてみる、たくさん本を読む、旅行する……」

 このバーを訪れた理由を尋ねられたときに話した項目を、再度確認するかのように私は改めて口にする。

「夜遊びってなにするんだよ」

 するとなにか引っかかったのか、怜二さんが訝し気な顔で聞いてきた。

「なにしましょう。夜景を見に行くのもいいですし、カフェに行ってみたり。星を眺めるのとかもいいですね。とにかく夜遅くに出かけたいんです」

 真面目に回答した私に対し、怜二さんが小馬鹿にしたように軽く鼻を鳴らした。

「そりゃまた、たいした夜遊びだな」

「馬鹿にしないでください、私は本気なんですから」

「柚花ちゃんみたいな子は、そういうことをひとりでしない方がいいよ」

 怜二さんだけではなく、近藤さんにまでやんわり夜遊びを否定されて軽くショックを受ける。

「え、どうしてですか?」

「ほいほい誰にでもついていきそうだからじゃないか?」

 すかさず横やりを入れられ私は眉を寄せた。
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