目覚めたら、社長と結婚してました
ただ、今日はそういうわけにもいかない。エレベーターに乗り込んだところで私から彼に話しかけた。
「本のお礼、なんらかのかたちでさせてくださいね」
「必要ない」
素っ気なく返され言葉に詰まる。
「で、お前の夜遊びはいつする予定なんだ?」
おかげで続けて紡がれた言葉に、私はすぐに頭がついていかなかった。
「するときは言え。付き合ってやる」
「どうされました?」
まさかの申し出に、混乱しかない。怜二さんは軽く息を吐いた。
「自分のところの社員になにかあったら後味悪いだろ」
「だから、なんで私になにかあるのが前提なんですか!」
彼の返事にどっと項垂れる。なんだ、そういうことか。からかっているのか、真面目なのか。こんなふうに気遣ってくれるのは私が社員だからだ。
近藤さんの手前、というのもあるのかもしれない。それでも忙しい彼がこう言ってくれるとは。私は考えを改める。
「ありがとうございます。でも大丈夫ですよ。怜二さんは社員思いなんですね」
笑顔で告げると、彼は虚を衝かれた表情をしながらも軽く笑った。
「今、知ったのか」
「はい。これからはもっと社長として敬うことにします」
「敬うくらいなら、おとなしく言うことを聞いておくんだな」
軽快なやりとりに、私はやっぱり笑顔になる。
彼に出会えてよかったな。バーに足を運べたこと。ずっと気になっていた本の続きを読めること。たくさんのものを得た中で、自然とそう思えた。
「本のお礼、なんらかのかたちでさせてくださいね」
「必要ない」
素っ気なく返され言葉に詰まる。
「で、お前の夜遊びはいつする予定なんだ?」
おかげで続けて紡がれた言葉に、私はすぐに頭がついていかなかった。
「するときは言え。付き合ってやる」
「どうされました?」
まさかの申し出に、混乱しかない。怜二さんは軽く息を吐いた。
「自分のところの社員になにかあったら後味悪いだろ」
「だから、なんで私になにかあるのが前提なんですか!」
彼の返事にどっと項垂れる。なんだ、そういうことか。からかっているのか、真面目なのか。こんなふうに気遣ってくれるのは私が社員だからだ。
近藤さんの手前、というのもあるのかもしれない。それでも忙しい彼がこう言ってくれるとは。私は考えを改める。
「ありがとうございます。でも大丈夫ですよ。怜二さんは社員思いなんですね」
笑顔で告げると、彼は虚を衝かれた表情をしながらも軽く笑った。
「今、知ったのか」
「はい。これからはもっと社長として敬うことにします」
「敬うくらいなら、おとなしく言うことを聞いておくんだな」
軽快なやりとりに、私はやっぱり笑顔になる。
彼に出会えてよかったな。バーに足を運べたこと。ずっと気になっていた本の続きを読めること。たくさんのものを得た中で、自然とそう思えた。