目覚めたら、社長と結婚してました
「初めまして、天宮怜二です。突然すみません、妻がお世話になりました」
彼の言葉で固まっていた奈々が急に慌てだす。そして思いっきりこうべを垂れた。
「い、いいえ。こちらこそ初めまして、山崎奈々です。柚花さんの高校時代の友人で……このたびはご結婚おめでとうございます」
そこで奈々が私と目を合わせた。
「ごめんね、柚花。調子悪かったんだ」
申し訳なさそうな顔をする奈々に私は首を横に振る。
「ううん。会えて嬉しかったよ。また連絡するね」
奈々を見送ってから、怜二さんは改めて私に尋ねてきた。
「体調は?」
「大丈夫です。あの、どうして、私がここにいるって……」
「毎週金曜日の昼にここのパン屋に来てただろ。二ヶ月前に移転して今はもっと大きいところでやってる」
私は目を丸くした。密着した状態から一度離れ、彼は私の左肩を抱いて歩くように促すので、おとなしく足を進める。
「にしても予想を裏切らないな、お前は。店が変わってショックのあまり泣いてるかと思えば」
「泣きませんよ」
からかうような怜二さんに強気で言い放ち、こっそりと下を向く。泣きそうになったのは内緒だ。でも、それはお店が変わっていたからじゃない。
見つけてくれたから、私のこと。ひとりぼっちだって思っていたのに。彼の顔を見たら、そんな不安も全部吹き飛んだ。
彼の言葉で固まっていた奈々が急に慌てだす。そして思いっきりこうべを垂れた。
「い、いいえ。こちらこそ初めまして、山崎奈々です。柚花さんの高校時代の友人で……このたびはご結婚おめでとうございます」
そこで奈々が私と目を合わせた。
「ごめんね、柚花。調子悪かったんだ」
申し訳なさそうな顔をする奈々に私は首を横に振る。
「ううん。会えて嬉しかったよ。また連絡するね」
奈々を見送ってから、怜二さんは改めて私に尋ねてきた。
「体調は?」
「大丈夫です。あの、どうして、私がここにいるって……」
「毎週金曜日の昼にここのパン屋に来てただろ。二ヶ月前に移転して今はもっと大きいところでやってる」
私は目を丸くした。密着した状態から一度離れ、彼は私の左肩を抱いて歩くように促すので、おとなしく足を進める。
「にしても予想を裏切らないな、お前は。店が変わってショックのあまり泣いてるかと思えば」
「泣きませんよ」
からかうような怜二さんに強気で言い放ち、こっそりと下を向く。泣きそうになったのは内緒だ。でも、それはお店が変わっていたからじゃない。
見つけてくれたから、私のこと。ひとりぼっちだって思っていたのに。彼の顔を見たら、そんな不安も全部吹き飛んだ。