目覚めたら、社長と結婚してました

　目が覚めた私は、車いすに乗せられて別室に移動し、一通りの検査結果を聞かされた。脳のＣＴやら頭部のレントゲンなどを撮ったらしい。

　うわぁ、自分の頭蓋骨って思うとなんか生々しいな。あ、でも歯並び意外と綺麗かも。

　自分に起こっていることに対して現実味が湧かず、そんなことを考える。

　そして先生からは、「ちょっとまっすぐに歩いてみて」とか「このボールペンを使ってみて」と指示されるので、私はおとなしく従った。

　結果、脳にも異常は見られず、歩道橋の階段から落ちたわりに、頭にこぶと手足にいくつか痣ができた程度ですんだらしい。

　よ、よかった。……いや、よくない。

　私のそばに立って、一緒に先生の話を聞いている社長をちらりと見上げた。


　病室に戻り、どこか実感がないままベッドに入る。ベッドはリモコン操作で起こせるから体を動かさなくても起き上がれるのは楽だ。上半身を楽な姿勢に起こして、私は大きく息を吐く。

　状況を整理しようと思います。

　どうやら私はここ半年の記憶がすっぽりと抜け落ちているらしい。

　最後の記憶は六月に入ったところだ。たしか珍しく両親が揃って帰国すると聞いて、久しぶりに会えるなと思っていたところだった、ような……。実際に会ったことは記憶にない。
　
　そして今、カレンダーは十二月のものに切り替わり、まさかの今年も残すところあと一ヵ月。

　もう年末が見えてきているなんて。気づけば夏が終わっているなんて！　まとまった夏休みをとって今年も両親に会いに行くがてら、海外旅行しようと思っていたのに。あれ、したの？