目覚めたら、社長と結婚してました
「わかる。続刊の発売が遅れたとき、お前は滅茶苦茶残念がってたから」

「そう、なんですか」

 なにもかも見透かされているようで、どうもむず痒い。彼はどこまで私のことを知っているのか、わかっているのか。

 注文した品が運ばれてきたのでプレートを受け取る。お店のロゴ入りの紙に半分包まれ、具がこぼれんばかりに挟まれていた。

 彼は生ハムをメインにトマトとモッツァレラチーズがサンドされ、生のバジルが彩を添えている。

 私はカマンベールチーズが丸ごとひとつサンドされ、そこにごろっと粒も楽しめるブルーベリージャムがかかったものだ。

 いただきます、と喜々として手を合わせた。一口頬張れば、パリパリの皮に中はふかふかのパンが楽しめる。これは焼き立てならではのおいしさだ。

 私のサンドイッチを見て、彼が怪訝そうに尋ねてきた。

「どんな味だ、それ?」

「絶妙な組み合わせで美味しいですよ。ジャムが甘すぎず、チーズの塩気にちょうどよくて。よかったら食べてみます?」

 自然と差し出して、はたと気づく。いくらなんでもこれはない。口をつけたというのを通り越して、こんな食べかけを勧めるなんて。しかし、自分から提案しておいて引っ込めるのも気が引ける。

 どうフォローしようか言葉を迷ったところで彼の指が私の手に触れた。

「もらう」

 私の手から彼の手にサンドイッチが移る。遠慮なく怜二さんはサンドイッチを口に運んだ。その仕草一つひとつに目を奪われる。
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