目覚めたら、社長と結婚してました
 笑われている意味がよく理解できず、どうも居心地悪くなってしまった。敬うと言ったのに、社員として社長に対する態度としては第三者から見てもひどかったかな。

 調子に乗ってしまったことを少しだけ後悔し、今日はここでお会計をお願いすることにした。

 一杯だけアルコールを飲んで、カフェオレはパンのお礼だとサービスしてもらった。あのカフェオレでも十分にお金が取れそうな代物だったのに。

 近藤さんにお礼を告げ、島田さんに挨拶してから店を出る。当然のように怜二さんも私に続くように店を出た。

 そしてふたりになったところで、さっきのことを謝ろうかどうか悩んでいると彼から声がかかる。

「おい」

 先ほどのことでなにかを言われるかと私はつい身構えた。

「なんでしょうか?」

「この後、少し時間があるか?」

 問いかけに質問が返ってきて、さらにはその内容がまったく予想していたものとは異なり面食らう。

「ありますけど……え、怜二さんまさか私が本気で訴えるって心配されてますか?」

「その話題はもう終わりにしろ」

 怜二さんは嫌そうな顔で言い切る。どうやらそういったフォローのためではないらしい。彼は髪を掻き上げ、重々しくため息をついた。

「夜遊びしたいんだろ、ちょっと付き合え」
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