目覚めたら、社長と結婚してました
 金曜日の夜だからか、駐車場に車はちらほら停まっている。整備された駐車場に前向きに停めれば、フロントガラス越しに街が一望できた。

 逸る気持ちを抑えて、シートベルトをはずす私に声がかかる。

「降りるのか?」

「降りないんです?」

 怜二さんは眉をひそめた。

「暑いだろ」

 一応、九月になったとはいえ、完全に夏が終わったとは言えない。まだ蒸し暑さが残るのは事実だ。

「でも日も落ちていますし、ここは高さもありますから。あ、怜二さんは待っててください。少しだけ公園の展望スペースに行って戻ってきます」

 せっかく来たのだから、という気持ちで告げると、彼は渋い顔を見せながらもエンジンを切った。

「あの」

「俺も煙草を吸いたいから付き合う」

 そう言って車を降りようとする彼に、私は助手席側のドアを開けて慌てて続いた。

 やはり外は快適とはいえず、じめっとした暑さと湿り気が肌につく。それを気にさせないほどの高揚感に包まれて、私は公園に入ると二階建ての白い建物を目指した。

 一階はお土産や外国の絵本などが揃っている雑貨屋、二階は『上山ケーキ』など、ここででしか食べられないメニューが揃う展望カフェが入っている。

 今はどちらも閉まっていて人の気配はまったくない。私はさらにその上、屋上に足を進めた。

 重めのドアを開けて、開かれたスペースに私は駆けだしそうになった。
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