目覚めたら、社長と結婚してました
 そしてようやくピアスホールが安定し、そろそろピアスが楽しめるようになっていた。たしかこの前、バーで報告もして、初めてのピアスに自分好みのものを買ったという話もした。

 にもかかわらず、露になった今の耳たぶには、なにもつけていない。

「そうなんですけど……実は早速、片方なくしちゃって」

 きまり悪く答えると、案の定、怜二さんが眉を曇らせた。なので私は努めて明るく続ける。

「しょうがありません。そういう運命だったんです。もっと似合うのをつけろよ、というメッセージと捉えることにします」

「恐ろしくポジティブだな」

「どうぞ、見習ってください」

 褒めている、というよりは憐れんでいるという声だったのはこの際、無視だ。続けて私はこっそりと自嘲的に笑った。

「……もしくは、ピアスの穴なんて開けなくていいってことだったのかもしれません」

「は?」

 怜二さんの反応に私は慌てて首を振る。

「あ、いえ。慣れていないからか、髪に絡まったりしてたので。意外と大変なんですね、ピアスって。髪はもう切りますけど」

「せっかくなんだから伸ばせよ」

 彼の言葉に私は目を丸くする。

「……怜二さんは髪が長い女性が好きなんですか?」

「べつに。お前にはそっちの方が似合うと思っただけだ」

 さらっと紡がれた言葉に私は赤面する。こういうところで、怜二さんはモテるんだと実感する。
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