Some Day ~夢に向かって~
そして2日後。学校を出た私達は、先輩のお宅に向かった。


「悪いな、ちょっと遠いんだけど。」


「大丈夫です。そのくらいの時間なら、自分の家に帰るのとほとんど変わらないですから。」


先輩の家と私の家はちょうど、学校を挟んで、対称の位置になるみたい。だからそこまで自転車漕ぐのは、わけないんだけど、やっぱり緊張するのは確か。


だいたい手ぶらでお邪魔しちゃっていいのかな?俺達は付き合い始めたばかりの高校生なんだから、変な気を遣わないでくれとは、先輩に言われてはいるんだけど・・・。


なんてことを考えていると


「なぁ、悠。」


って先輩が声を掛けて来ると、自転車を止めた。


「はい、何ですか?先輩。」


当然、私も返事をして、自転車を止めたんだけど


「ずっと我慢してたんだけどさ、一向に変わる様子がないから、言わせてもらうけど。」


えっ?私、なんか先輩に失礼なことしちゃった?こんな所でお説教されちゃうのかな・・・。私がドキドキしながら、次の先輩の言葉を待っていると


「お前、いつまで俺のこと、先輩って呼ぶつもり?」


「へ?」


「いつまで、俺に敬語使ってるつもりなんだよ。」


いけない、思わず間抜けな声を出してしまった。由夏にも指摘される私の悪いクセなんだけど、意外なことを言われると、つい出ちゃうんだ。


「お前は俺の何?」


「か、彼女?」


「なんで疑問形なんだよ。じゃ、俺はお前の何なんだよ?」


「彼氏、です・・・。」


「だよな、だったらおかしいだろ。」


責められてるって感じじゃないけど、でも先輩の表情は結構厳しい。


「すみません・・・。」


「別に謝ってくれなくてもいいんだけど、悠はそう思わないの?」


そうだよね、そういうのって、結構大事なことだよね。私だって「悠」って呼ばれるようになって嬉しいし、それまで「君」だったのが「お前」になったし。


「でも・・・じゃ先輩のこと、なんて呼んだら・・・。」


結構困っちゃうんだよね。「白鳥さん」じゃ、なんか不倫カップルみたいだし、みどりさんは松本先輩のことを「松本くん」って呼んでるみたいだけど、私は年下だから「白鳥くん」というのも・・・。


恋人同士ならやっぱりファ-ストネ-ム呼びかな?でも「徹」なんて呼び捨ては、私が恥ずかしくて死んじゃいそうだし、「徹さん」っていうのもなんかイマイチ、かな・・・。


私が戸惑っていると、先輩は1つため息をついて言った。


「それは俺が決めることじゃなくて、悠が呼びたいように呼んでよ。」


「は、はい・・・。」


そう、急に言われても・・・いや急でもないんだけど、正直「先輩」って呼ぶことに慣れちゃって・・・。


もじもじしてる私を、先輩はしばらく見ていたけど


「わかったよ。とにかく『先輩』って呼ぶから、敬語になっちゃうんだから、『先輩』はもう禁止。どう呼んでくれるかは金曜までの宿題にしてやるから、よく考えてよ。」


そう言うと、ようやく先輩は笑ってくれた。


「はい、すみません。」


「だから謝るなって。さ、行こうぜ。」


私達はまた、自転車を走らせ始めた。
< 103 / 178 >

この作品をシェア

pagetop