Some Day ~夢に向かって~
そうか、悠。お前、そんなこと気にしてたのか・・・。


俺は今まで、恋愛に積極的になれなかった。自分で言うのもなんだけど、俺は確かにモテた。ラブレター何枚貰ったかわからないし、告白も随分された。


でも野球部のエースなんて存在になれば、誰でもある程度は、モテるものなんだろうし、親父がたまたま会社経営してるから、俺を御曹司かなんかと勘違いして、色目使ってくる女もいたから、俺は彼女達の気持ちを全く素直に受け取ることが出来なかった。


それよりなにより、俺は2年の夏あたりから、肩の不調に苦しめられていた。もしかしたら、俺は野球が出来なくなってしまうかもしれない、その不安と恐怖と戦うのに精一杯で、正直恋愛どころじゃなかったんだ。


そして、その不安はとうとう現実となり、1年間の休学を経て、高校に戻った俺は、新しい夢は見つけ出してはいたが、俺にそれが本当に出来るのか、焦燥感は強かった。


そんな時、俺は悠と出会った。


悠はその前から俺のことを見ていてくれたらしい。悠も明協のエースたる俺に好意を抱いていたんだろう。


だけど、彼女は俺がもう投げられないと告げた時に涙を流してくれた。そして、それからも俺に対する態度を変えることはなかった。


そして、俺が新聞記者になりたいと告げた時、応援しますと目を輝かせて、言ってくれた。


俺は初めて、エースでも社長の息子でもない、素の白鳥徹という男を好きになってくれた女の子に出会えた。


悠をひと目見て、心奪われたあの時の俺は、間違ってなかったんだ。


だから俺は言った。


「悠じゃなきゃ、ダメに決まってんじゃん。」


って。
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