Some Day ~夢に向かって~
「悠じゃなきゃ、ダメに決まってんじゃん。」


そう聞こえた。先輩、今、確かにそう言ってくれたんだよね?


「悠は、野球を取り上げる代わりに、神様が俺にくれた大切な宝物。だから、代わりはいない。オンリーワン。」


先輩・・・。


「だから俺が悠を手放すことは絶対にない。あとは俺が悠に手放されないように努力するだけ。」


そう言うと、先輩は暖かい笑顔をくれる。


ちょっと嬉し過ぎる、でも私の方こそ、先輩を手放すなんて、あり得ないから。


「あと、ついでに言っとくけど、俺は親父の会社継ぐつもりないから。」


「えっ?」


「って言うか、俺には無理だから。」


先輩はグラウンドの方に目を向けながら言う。


「俺のひぃ爺さんが残した借金まみれの会社を、爺さんと親父で立て直して、大きくした。すげぇなとは思うし、順番から行けば、いずれ俺がってことになるんだろうけど、親父に150キロの球が投げられなかったように、俺にはあの会社は背負えない。」


「・・・。」


「それが親父にはわかってもらえないんだよなぁ。」


そう言うと先輩はため息をつく。


「とにかく今の俺は新聞記者になることしか考えてないし、考えられない。だけど万が一、親父に押し切られちまったとしても。」


ここで、先輩はまた私に視線を向けた。


「騙されたと思われちゃうかもしれないけど、それでも諦めて、一緒に居てくれよ、絶対に。」


「先輩・・・。」


「悠となら、何があっても立ち向かっていけるから。頑張れるから、きっと。」


そう言って、先輩に見つめられた時、私は間違いなく、1回キュン死した。
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