Some　Day　～夢に向かって～
すると、おずおずと私の前に現れたのは


「加奈ちゃん。」


うつむき加減の加奈ちゃんに由夏は


「よく来たね。さ、一緒に食べよう。悠、いいよね？」


と笑顔で言うけど、私は


「どうしようかな？」


と冷たく答える。


「ちょっと、悠。」


予期せぬ私の言葉に、由夏は、慌ててたしなめようとするけど、私は追い討ちを掛けるように言う。


「どうしてもって言うんなら、私の言うことを1つ聞いてくれる？」


何を言い出すのかと、息を呑んだような2人に対して、私はここで、口調を変えた。


「もう2度と私のことを『水木さん』なんて呼ばないって約束して欲しいな。」


その私の言葉に、ハッと顔を上げた加奈ちゃんの目からみるみるうちに涙が溢れ出して来る。


「ね、加奈ちゃん。」


私がそう言って、笑顔を送ると、加奈ちゃんは私の胸に飛び込んで来た。


「悠ちゃん、ごめんね、本当にごめんなさい。」


そう言って、泣きじゃくる加奈ちゃんの頭を、私はそっと撫でる。


「加奈ちゃん、悪いけど、徹くんは絶対に譲れないよ。それでも、私と友達でいてくれるの？」


「うん、悠ちゃんが嫌じゃなかったら。だって、もし悠ちゃんと由夏がいてくれなかったら、私の高校3年間、なんにも残らないもん。」


「そんなことないだろうけど。でもよかった、2人より3人の方がもっと楽しいってことが、わかっちゃったから、正直加奈が抜けて、寂しかったんだ。だからこれからはまた3人組で行こうね。」


「由夏、ありがとう・・・。」


加奈ちゃんは泣き笑いの顔でうなずいた。
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