Some Day ~夢に向かって~
ゴ-さんとは、いろいろ話したけど、目新しい結論は特になく、ただ居郷監督が話しがあるみたいだから、昼休み(と言っても、今の俺達にとっては放課後なんだけど)にでも、監督の所に行って来いということで、俺は悠を待たせて、監督室に向かった。


監督はウチの高校のOBで、ゴ-さんがオヤジなら、監督はよき兄貴分という存在だった。俺が学校に戻ってからは、あまり話す機会はなくなってしまったけど、俺の事を気にかけてくれてることは、感じていた。松本も講演で言ってたが、俺達は良き指導者に恵まれたと思う。


「失礼します。」


ノックをして中に入った俺は、懐かしい顔を見た。


「次郎さん。」


「よう、しばらく。」


1年先輩の関口次郎さん、俺の控え投手だった。今は現役を退き、大学で指導者を目指して勉強していて、長期休みの時を中心に、母校のコ-チも務めている。


「いろいろ大変だったな、まぁ焦らずに頑張れよ。」


「はい。」


後輩の俺のサポ-ト役を、不満の色1つ見せずに、務めてくれた温厚な先輩は、柔らかい笑顔で、俺にそう言うと、入れ替わりに監督室を出て行った。


「座れよ。」


「はい。」


勧められるままに、腰を下ろした俺に監督は、こう切り出した。


「本当はこんな話はしちゃ、いけないんだろうが。」


「はい。」


「伝手があって、お前が受けた某大学の入試結果を聞いてしまった。」


「そうなんですか。」


「3点、合格ラインに足りなかったそうだ。」


「3点・・・。」


「そう3点。思わず言ってしまったよ、何とかならないのかって。」


「・・・。」


「でも、なんともならん、これが現実だ。1点というものの重みを身に沁みて、知ってるもんな、俺達は。」


「はい・・・。」


そうか、たったの3点か・・・改めて悔しさがこみあげて来る。


「今日は、別にお前を悔しがらせる為に、わざわざ呼んだわけじゃないから。それで、これから、どうするつもりなんだ。」


「浪人するつもりです、新聞記者という目標は捨てるつもりはありませんから。」


監督の目を真っ直ぐ見て、俺は答えた。


「お前がブンヤさん志望と聞いた時は、正直驚いたが、意志は変わってないってことか。」


「はい。」


俺は強く頷いた。
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