Some Day ~夢に向かって~
教室に戻って来た私達は、緊張も解けて、いつもの私達に一旦戻る。


「加奈、やる~。」


「メチャクチャ、カッコよかったよ。」


「ありがとう、心臓バクバクだったんだけど~。」


「とてもそうは見えなかったよ。」


「それにしても校長先生は最後まで、マイペ-スだったね。」


「あれはヤバいよ、何分しゃべってた?KYの権化だよ。」


なんてことをおしゃべりしていると、山上先生が教室に入って来た。私達は慌てて、席に着く。


「いよいよ最後だな。」


そんな私達を見渡しながら、先生は話し始めた。


「教師をかれこれ20年以上やって来て、担任としても、何人もの卒業生を送り出してきた。いつも最後になにか、かっこいいこと、洒落たことを言ってやろうと思うんだが、うまくいった試しがない。それでも一言言わせてもらう。最後だと思って、我慢して、聞いてくれ。」


(もちろんです、先生。)


「今日まで、俺達は、当たり前のように、毎日この教室で、顔を合わせて来た。だけど、それも今日で最後だ。明日から、お前たちがここに来ることはもうない。そして、お前達が全員、1人も欠けずに顔を揃えることも、もうない。例え、明日集まろうと、今決めたとしても、たぶん無理だろう。」


(そうかもしれないな・・・。)


「だとしたら、今まで、こうして毎日同じ教室で勉強していたということが、実はとんでもない奇跡だったということになる。縁あって、同じ年に同じ高校に入り、3年という1番大切でナ-バスになる時期に、クラスメイトになったお前達。俺は本当に、物凄い縁で結ばれてるんじゃないかと思うぞ。」


(はい。)


「これだけの人間がいるんだ、気の合う奴、合わない奴がいて当然だ。それでもこの奇跡の仲間たちは、大切にする価値があると俺は思う。」


(先生・・・。)


「全員で集まるのは、もう無理かもしれない、今までみたいに毎日会うなんて、出来るはずない。だけど、本当にたまにで構わない。お互いの顔を思い出して、時には顔を合わせて、思い出を語り合い、近況を話し合い、悩みを打ち明け合い、そして夢を語り合って欲しい。そんな仲間の端くれにもし、俺も加えてもらえるなら、こんなに嬉しいことはない。」


ここで、先生はもう1度、私達を見回すと言った。


「卒業式の日に相応しくない言葉かもしれないが、俺はあえて言わせてもらう。卒業おめでとう、みんな、ここから力強く羽ばたいて行ってくれ。そして、また・・・会おう!」


「はい!」


その先生の言葉に、私達は大きく返事をしていた。先生の、そして私達の多くの瞳に涙が光っていた。
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