Some Day ~夢に向かって~
クラスとして、最後のお別れを終えた私達。さっきも先生が言ってた通り、もう私達がこの教室に戻ってくることはない。


(1年間、お世話になりました。さようなら。)


中に向かって、深々と頭を下げると、私も教室を後にした。


「ずるいよな、ゴ-さん。最後にあんなこと言って、泣かせにかかるなんて。」


「やられましたね。」


そんなことを塚原くん達と話しながら、歩いていた徹くんが、ふと後ろの私達を振り返った。


「悠、これから野球部のお別れ会に行って来る。少し経ったら、グラウンドに来てくれよ。」


「はい。」


「じゃ、あとで。」


徹くん達を見送った私達は、改めて校内を歩いてみた。いろんな所で、いろんな形で別れを惜しんでいる、そんな光景を見ながら、私達は、歩を進める。


1年生の時の教室を見に行くと


「悠ちゃん、卒業おめでとう!」


そう言いながら、例によって、抱きついて来る唯ちゃんを、予期していた私はしっかり受け止める。


「ありがとう、唯ちゃん。」


「悠ちゃんもお兄ちゃんもソウくんもみんな卒業しちゃうなんて寂しいよ~。」


「大丈夫、またいつでも会えるから。今度はウチにも遊びに来てよ、唯ちゃんちみたいに広くはないけどね。」


「ホントに?ありがとう、絶対行くから。大学のこととか、いろいろ教えてね。」


「うん。」


その後、屋上を始め、2年の時の教室や学食、音楽室などゆかりの地を巡った私達は、グラウンドに向かった。


「ここも私達の高校生活では、重要な場所だったよね。」


「そうだね。」


由夏の言葉に、私は肯く。


「私達、もしあの時、勇気を出して、野球部に入ってたら、どうなってたかな?」


「そうだね。でもなんか想像つかない。私達はここで先輩達を応援してるのが、似合ってたんだよ。」


そう言って由夏は笑う。


グラウンドでは、卒業生が次々と胴上げされている。徹くんも松本先輩達から遅れること1年、後輩達の手で宙に舞った。


「昨日、久しぶりに去年のクラスメイトから電話が来て、『お前、これからクラス会はどっちに出るんだ?』って聞かれたから、『そんなの決まってる、両方だ。だからちゃんと、俺のこと呼ぶように、幹事に言っとけ。』って答えたよ。みんな、留年も悪いことばかりじゃないぜ。まぁ無理にお勧めはしないけどな。」


終わった後、そんなことを言って、後輩達を笑わせていた徹くん。そして


「これからは名古屋から、お前達のことを応援している。野球、やれる限り続けてくれ。もうやり切ったって思えるまで。じゃ、あとはよろしく。」


最後にこんなメッセージを残すと、徹くんはみんなに、クルリと背を向けた。
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