Some Day ~夢に向かって~
文化祭の準備が始まっていた。あれだけ、実行委員を決める時には、押し付け合っていたくせに、いざとなると高校生活最後の思い出にとか、言い出して、俄然張り切りだすクラスメイト達を私は内心笑っていた。


私達は、先輩を囲んで、おしゃべりに花を咲かせていた。クラスメイトからの冷たい視線は感じていたが、誰もが先輩に遠慮して、文句を言ってくる子はいない・・・はずだった。


「先輩。」


ふと聞こえて来た声。


「水木。」


水木さんだった。先輩からの戸惑った視線と、その周りからの敵意に満ちた視線にめげずに、水木さんは言う。


「やる気がないんなら、帰って下さい。」


驚く先輩に、水木さんは目に一杯の涙を浮かべて


「私、先輩のこと、見損ないました。」


と言うと、教室を飛び出して行ってしまった。そんな水木さんを呆然と見送った先輩も、立ち上がり、取り巻き女子達も水木さんの悪口を言いながら、そのあとを追う。


そんな中、私は動けなかった。あまりにも衝撃的過ぎて。


(水木さん・・・。)


凄い、と思った。


水木さんは、先輩が好きだ。ずっと憧れてきた。私も同じだからよく分かってる。その憧れの人に、キチンとモノを言った水木さんは本当に凄いと思った。


私は水木さんの立場だったら言えただろうか?先輩に嫌われたくない、たぶんそう思っただろう。でも水木さんは言った、怖くなかったのかな?先輩と気まずくなることが、ひょっとしたら先輩ともう口も利けなくなるかもしれないのに。


ううん、水木さんは本当に先輩のことを思ってる。だから言えたんだ、あなたは間違ってる、そんなあなたは嫌だって。そして、その思いは必ず、先輩に伝わるって、信じてたんだ。


勝てない・・・素直にそう思った。
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