Some Day ~夢に向かって~
食事が終わり、後片付けの時間になった。さすがにお手伝いしないわけにはいかないと、私は強引にお母さんにお願いする形で、キッチンに入った。


「悪いわね。」


「とんでもありません。このくらいはさせていただかないと、私、帰ってから親に叱られてしまいます。」


今、私はお母さんと2人きり。唯ちゃんは明日までの宿題がまだなことがバレ、徹くんに自分の部屋まで、強制連行されて行った。


お母さんとは、だいぶ打ち解けられたけど、こうやって2人だけだと、やっぱりちょっと緊張してしまう。しばらく2人で洗い物をしていたけど


「悠ちゃん。」


「はい。」


「この間は・・・ごめんなさいね。嫌な思いしたでしょ。」


私はお母さんの顔を見る。やっぱり、あれは私の思い違いじゃなかったんだ・・・。


「申し訳なかったんだけど、あれは悠ちゃんを試したの。」


「私をですか?」


「ええ。徹が見初めた娘さんに、間違いはないとは思ったんだけど、勘違いをした子だったら困ると思ってね。」


勘違いって・・・?


「お陰様で、主人の会社もそれなりの規模になって、世間様から見れば、私達もセレブかなにかに見えるみたいでね。徹にも唯にも、そんな高貴な方面からのお誘いや将来の縁談が舞い込んで来るのよ。」


やっぱりね・・・。


「私達に言って来るならまだしも、本人に直接アタックしてくる人達もいてね。正直閉口してるのよ。」


「・・・。」


「私はね、悠ちゃん。短大卒業して、主人の会社に一般入社した、ただのOLだった。それが入社して、いきなり当時若き専務だった主人に目を付けられて、強引に配属を専務秘書に変更されると、あとはひたすら強引に口説かれ続けて・・・。今だったら、ハッキリ言って大セクハラよ。でも結局1ヶ月で陥落させられて、私のOL生活はそこでおしまい。勤務先が、秘書室から当時主人が住んでいたマンションになって、そのまま今日に至るのよ。」


なんか凄い話・・・。


「そんな半分誘拐婚みたいな私達だけど、2人の子供に恵まれ、それなりに幸せな夫婦生活を過ごしてこられた。そして、私達は2人の子供を、多少は我が儘にはなっちゃったけど、お高くとまるような育て方はしてこなかったつもり。」


「はい・・・。」


「そんなところに、なんか使用人をいっぱい抱えて、毎日優雅に・・・なんて感覚の人に来られてしまったら、誰よりも私が困っちゃう。」


そう言って、お母さんは笑う。
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