Some Day ~夢に向かって~
そして、気が付けば、時計の針はもうすぐ9時。すっかりお邪魔してしまった。私はご両親にお礼とご挨拶をして、お暇することにする。


「悠さん、送って行こう。椎名を待たせてある。」


お父さんに「悠さん」と呼ばれたのも、恐縮だけど、送っていただくなんてもっと。それにやっぱりあの立派な車に乗って帰宅するというのも・・・。


そう思って辞退するも、お父さんは


「こんな時間に大切なお嬢さんを1人で帰らせるなんて、悠さんのご両親に申し訳がたたん。」


「俺がちゃんと送ってくよ。」


徹くんが助け舟を出してくれるけど


「自転車と電車で行って帰って来て、何時になると思ってるんだ。お前もまだ高校生だろう。」


と一喝。結局、押し切られてしまったが、一緒に来てくれるのがお父さんと聞いて、またまた驚く。


「なんで父さんが。悠だって気づまりだろう。だいたい俺の彼女なんだぞ。」


「椎名はお前の運転手じゃない。」


「そんなことわかってるよ。でもさ、そんなのおかしくないか?だったら俺も行くよ。」


「お断りだ。お前と一緒のドライブなんて、それこそ気づまりだ。」


「なっ。」


このやり取りにお母さんと唯ちゃんは顔を見合わせて、大笑い。ふくれる徹くんと、厳しい表情のお父さんと、どうしていいかわからないでオロオロする私。


結局、この場を収めてくれたのは、途中から現れた椎名さんだった。


「徹さんの大切な彼女さんと我が社の大黒柱の社長、どちらも責任もって、私がお運びしますから、どうぞご安心を。」


信頼する椎名さんにそう言われて、徹くんは不承不承に諦めたけど


「親父、悠に手出したら、承知しねぇからな。」


徹くん、なんてこと言うの。って私がビックリしていると


「大丈夫です、それも奥様と徹さんに代わって、私が責任もって監視いたします。」


って、椎名さんが大真面目な顔で言うので、今度はふくれっ面の徹くん以外のみんなが爆笑。


結局、私は社長専用車の後部座席で、徹くん達に見送られて、徹くんちをあとにするというVIP扱いで帰宅の途についた。


「スマンな。本当は徹が一緒の方がいいのは百も承知だが、君と少し話をさせてもらいたくてね。」


車がスタートすると、お父さんが切り出して来た。
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