Some Day ~夢に向かって~
「まだ高校生の君に、こんな話をするのは早いし、また重いというのは、わかってはいるんだが、こんな機会はなかなかないと思ってね。」


何を言われるのか、私は緊張の面持ちで、お父さんの顔を見つめる。


「君達が真剣に付き合っているということは、今日2人と話させてもらって、よくわかった。その点については安心した。徹が名古屋に行くことになって、悠さんに寂しい思いをさせてしまうだろうが、よろしく頼むよ。」


「はい。」


「それで、問題はその後のことだ。」


お父さんは私を緊張させまいと、優しい視線を向けてくれるが、私はやはり身を固くしてしまう。


「私の会社のことは、少しはご存知かな?」


「はい。HPとかを拝見しました。」


「そうか、ありがとう。私が3代目になるんだが、お陰様で、まぁいわゆる大企業と言われるような会社になった。そして徹にそれを継がせたいと思っている。」


「聞いています。」


「じゃ、徹がそれを拒んでるということも知ってるね。」


「はい。徹さんからお付き合いしたいと言っていただいた時、お父さんの会社を継ぐつもりはないとお聞きしました。」


「そうか、悠さんに、はっきりそう言ったのか。」


苦笑いを浮かべるお父さん。


「こんなことを申し上げていいのか、わかりませんが、その時、徹さんは『父さんに150キロのボールが投げられなかったように、俺にもあの会社は背負えない』っておっしゃってました。」


「なるほど。」


そう言ったあと、お父さんは表情を引き締めた。


「でもな悠さん、私は確かに150キロの球は投げられなかったが、140キロは出してた。」


「えっ?」


「今から30年近く前の140キロだ。自分で言うのもなんだが、それなりのものだったはずだぞ。なぁ椎名。」


「はい。私は随分手を腫らしましたよ。」


お父さんが同意を求めると、当然前を向いたまま、椎名さんが答える。


「椎名さんも野球をされてたんですか?」


「はい。社長の2年後輩です。まさか、こうして今に至るまで、お世話になるとは思ってませんでしたが。」


「まぁ、腐れ縁という奴だな。」


そう言うとお父さんは笑う。椎名さんへの信頼が感じられた。
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