Some Day ~夢に向かって~
「話が逸れてしまったが、要は半分親バカかもしれないが、徹にも経営者としての素質があると、私は思っている。」


「そうですか・・・。」


「あいつは私に反抗ばかりしてるが、そのくせ、必要な時は、ちゃっかり私を利用している。嫌味でも皮肉でもなく、そういう臨機応変な対応というのは、経営者として、重要なんだよ。」


そう言うと、お父さんは笑った。


「まずは徹には、名古屋で、自分のやりたいことを悔いのないように、全力でやって欲しいと思ってる。全てが今後のあいつの血となり肉となるはずだからね。そして成長した4年後のあいつと、またいろいろ話をしてみたいと思ってる。」


「はい。」


「そして君だ。」


お父さんは改めて、私を見る。


「私は恥ずかしながら、この歳になっても、自分の父親に頭が上がらないんだが、そんな私でも、1つだけ絶対に譲らなかったことがあった。それは自分のパートナーは自分で見つけることだ。見合いなんて、絶対お断りだと言い切って、父親の言うことを聞かなかった。当たり前のことだと思うかもしれないが、大切で、難しいことだよ。」


「・・・はい。」


「もちろん今から、結婚を意識する必要なんてない。だけど、頭の片隅で構わない。徹は、自分が望まない人生を歩むことになるかもしれない。そして、その時には、君もその道を一緒に歩むことになるかもしれないってことは、覚えておいて欲しい。」


「わかりました。」


私はまっすぐにお父さんを見た。


「私は特に頭がいいわけではありませんし、経営者の妻になれる自信なんて、少しもありません。でも私は徹さんの側にずっと居たいと思ってます。そして徹さんの味方で居たいと思います。いつでも、どんな時でも。」


帰る前にお母さんに言われたことだけど、私は改めて、本当に強くそう思って、そう言った。そんな私を、お父さんは少し見つめていたけど、やがて顔をほころばせた。


「徹はいい人に、巡り合った。なぁ、椎名。」


「はい。徹さんが羨ましいくらいですよ。」


「そんな・・・。」


私は思わず首を横に振る。


「だが、それだけ徹も大きな責任を背負った。悠さんを絶対に幸せにしなくちゃな。」


「徹さんなら大丈夫です。絶対に。」


椎名さんの言葉に、嬉しそうな表情で頷くお父さん。徹くん、お父さんはやっぱり徹くんを心から愛してるよ、よかったね。


私も嬉しくなった。



END
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