Some Day ~夢に向かって~
2時間目が終わって、中休憩に入ってから、少しして、由夏と話をしていた私の後ろから、声がした。


「あのう・・・。」


振り向くと、ドアの外に1人の女の子が立っている。ネッカチーフの色を見ると、どうやら1年生らしい。


「はい。」


「水木悠さんって、どの人ですか?」


「えっ、あ、私だけど。」


可愛い子だな、なんて呑気に考えていた私だが


「あなたが水木さん?」


いきなり表情も声音も険しくなったその子に思わずたじろぐ。


「どういうつもりなの?お兄ちゃんに何の恨みがあるのよ!」


ちょ、ちょっと話が全く見えないんですけど。少し落ち着いて・・・。


「お兄ちゃんの悪口、言いふらして、どういうつもりなの!」


一方的に2年後輩の子にまくしたてられて、私はどうしていいかわからず、隣の由夏もポカンとその子の顔を見つめるだけ。


「ちょっと、唯ちゃん。」


この状況に気づいた沖田くんが慌てて飛んで来たけど、その子は彼にも噛み付く。


「ソウくん、あなたがいてどう言うこと?」


(ソウくん?)


先輩をソウくん呼ばわりして、この子いったい何者?


「どういうことって?」


「この人でしょ、お兄ちゃんが文化祭の準備サボってるって、いちゃもん付けて、その上、ズル休みしてるとか言ってるの。お兄ちゃんをこんな侮辱する人が、同じクラスにいるのに、なんで平気な顔してんのよ!」


「ちょっと待って、とにかく一回落ち着こうよ。」


「これが落ち着いていられますか。私、絶対許さないんだから。」


「わかった、わかったから、とりあえず、ちょっとこっち来てよ。」


沖田くんはその子を懸命に教室の外に連れ出す。


「何すんのよ、離してよ、ソウくん。とにかくはっきり話つけなきゃ、私、気が済まないんだから。」


私にスマンというポ-ズを送ると、沖田くんは興奮するその子を引っ張りながら、教室を離れていった。


「参ったな、すっかり誤解してる。」


あっけに取られたまま、2人を見送った私達の横で、やれやれと言った風情の塚原くんが呟く。


「聡志、何者なのよ?あの子。」


「白鳥唯、先輩の妹だ。」


「えっ、あの子が?」


「そう。」


塚原くんは、ため息をつきながら答えた。
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