Some Day ~夢に向かって~
沖田くんは3時間目が始まっても、帰って来ず、4時間目開始ギリギリになってようやく戻って来た。


「水木さん。」


「沖田くん、ごめんね。3時間目サボらせちゃって。」


「とにかく、なだめるのに必死でさ。参ったよ。」


もうすぐ授業が始まる。詳しい話はあとにして、私達は席についた。


そして昼休み、唯ちゃんの再乱入の恐れが捨てきれないとの沖田くんの言葉で、私達は、急いで屋上に避難する。


「どうも、一昨日のことが、尾ヒレ葉ヒレついて、いろいろ校内に広まってるらしいのよ。」


さっそく得意の情報収集能力を発揮した、由夏が口火を切る。


ちなみに沖田くんは唯ちゃんに備えて、教室に残って、私達2人と塚原くんと、それになぜか桜井さんという不思議なメンバー。


「まさに事実と誤報が入り混じっちゃってるのね。」


「そう、サボってるって先輩に言ったのは、確かに悠だけど、仮病を疑ったのは私だから。」


「怖いね、噂って。」


桜井さんの言葉に、私達は大きく頷く。


「それが耳に入って、我慢出来ずにやって来たんだろうけど、例えどんなに腹が立ったとしても、1年生の女子が1人で3年の教室に怒鳴り込んで来ねぇだろ、普通。」


呆れたように言う塚原くん。


「そうだよね。」


「どんな子なの?」


「見ての通り、お嬢様育ちの怖いもの知らず。じゃじゃ馬って表現がピッタリだろ。」


「なるほどね。」


「悪い子じゃないと思うよ。高校入る前から、たまに野球部に遊びに来てて、それで俺らも知ってるんだけど、兄貴のことになると見境なくなるとこあってさ。」


「お兄ちゃんが大好きなんだ。」


「そういうこと。ハッキリ言って、ブラコンって奴か。」


塚原くんの言葉に、顔を見合わせる私達。


「う〜ん、これは強敵だぞ。悠も加奈も覚悟しないと。」


からかい気味に由夏は言う。今まで先輩に彼女がいなかったのは、ひょっとしたらあのパワフルな妹ちゃんの影響もあるのかもしれない。


「沖田はどうもあの子に気があるみたいで、ああやって、かまってるけど、とてもあいつの手には負えねぇよ。結局あの子抑えられるのは白鳥さんしかいねぇってこと。」


「とにかく、早く先輩には早く帰って来てもらわないと。ね、悠ちゃん。」


「う、うん・・・。」
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