Some Day ~夢に向かって~
今日は9月1日、2学期の始まりだ。
去年のこの日は真っ黒に日焼けし、見るからに夏休み、羽を伸ばしてましたと言わんばかりの生徒が目についたが、今年の夏はやはり違ったようだ。
あと半年に迫った「大学受験」という私たちのこれからの人生を大きく左右するに違いない一大イベントを意識しないでいられる人は、やはりほとんどいないということなのだ。
「おはよう、由夏。」
我がクラス、3年A組の教室には既に多くの生徒が登校していた。その中に親友の岩武由夏の姿を見つけた私は声を掛ける。
「あっ、おはよう、悠。」
振り向いた由夏は、私、水木悠の姿を認めると、パッと表情を輝かせて、手を振ってこたえてくれた。
「久しぶりだね。」
「うん、悠不足で寂しかったよ。」
再会早々、嬉しいことを言ってくれる親友。入学してからすぐに仲良くなり、常に行動を共にしてきたと言っても言い過ぎではない私達だったが、さすがにこの夏休みの間は、LINEや電話でのコミュニケーションがほとんどだった。
「そう言えばさ。」
「うん?」
「帰ってくるみたいよ、今日から。」
どこにでも耳の早い人はいるものだ。由夏がまさにそうで、誰それが誰と付き合い出したとか、別れたとか、あの先生がどうしたとか、私にいろんな話題を提供してくれる貴重な情報源だ。
「そうなんだ・・・。」
私は思わず、1学期の間、ずっと空いていた自分の隣の席に目をやる。
「帰って来るんだ、先輩。」
誰が帰って来るのか、私達の間では、わざわざ確認する必要もない。
「よかったね、悠。」
「うん・・・。」
冷やかすように言う由夏に言葉少なに答える私。
「どうしたの?あんまり嬉しそうじゃないじゃん。」
「別に嬉しくないわけじゃないけど・・・。」
隣の席が、先輩のだと知った時はビックリした。それに折角隣り合わせになれたのに、学校に来てないんじゃな、と残念に思ってたのは事実だけど。
「隣の席だからって先輩と絶対に親しくなれるわけじゃないし、もともと先輩と知り合いなわけでもないし。」
「なに、そのト-ンダウン。1学期の間、早く帰って来ないかなぁって口癖のように言ってたくせに。」
「うん・・・。」
「チャンスじゃない、絶対。地の利は悠にあり。」
我が事のように、テンションを高くしてる由夏の横で、私の心はイマイチ盛り上がらない。
そうこうしているうちにチャイムが鳴る。まずは講堂に移動して始業式、無駄に長い校長の話を聞き流して、教室に戻るまでの間、私は先輩の姿を探し求めたが、見つけることが出来なかった。
(やっぱり、まだ戻って来てないのかな?)
ガッカリしながら、そのくせちょっとホッとしたような複雑な気持ちで教室に戻ると、追いかけるように山上先生が姿を現した。
「おはよう。今日から2学期、また改めてよろしく。」
簡潔にそう挨拶した先生は、扉の外に向かって声を掛けた。
「いいぞ、入って来い。」
その声に扉が開き、入って来たのは、やっぱり・・・。
(先輩!)
間違いなく白鳥先輩、その人だった。先輩が入って来た瞬間、教室の空気が明らかに変わり、多くの生徒が息を呑んだのが、はっきりわかった。
(カッコいい・・・。)
かく言う私も1年ぶりに目の当たりにした先輩の姿に、ただ見惚れるばかりだった。
「白鳥徹です。事情があって休学してましたが、今日から復学することになりました。短い間ですが、よろしくお願いします。」
先生に促されて、挨拶をした後、私達に向かってペコリと頭を下げる先輩。
「ということだ。去年までは学年も違っていたから、ほとんどの者が白鳥とはしゃべったこともないだろうが、顔くらいは知ってる者は多いだろう。仲良くしてやってくれ。白鳥、一番後ろの空いてる席がお前の席だ。」
「はい。」
クラス中の視線を浴びながら、先輩は私の方に向かってくる。ドキドキしながらその姿を見ていた私に、先輩は軽く会釈すると、席に着いた。
(キャ-、私に向かって挨拶してくれた~。)
慌てて会釈を返しながら、私は1人舞い上がっていた。
去年のこの日は真っ黒に日焼けし、見るからに夏休み、羽を伸ばしてましたと言わんばかりの生徒が目についたが、今年の夏はやはり違ったようだ。
あと半年に迫った「大学受験」という私たちのこれからの人生を大きく左右するに違いない一大イベントを意識しないでいられる人は、やはりほとんどいないということなのだ。
「おはよう、由夏。」
我がクラス、3年A組の教室には既に多くの生徒が登校していた。その中に親友の岩武由夏の姿を見つけた私は声を掛ける。
「あっ、おはよう、悠。」
振り向いた由夏は、私、水木悠の姿を認めると、パッと表情を輝かせて、手を振ってこたえてくれた。
「久しぶりだね。」
「うん、悠不足で寂しかったよ。」
再会早々、嬉しいことを言ってくれる親友。入学してからすぐに仲良くなり、常に行動を共にしてきたと言っても言い過ぎではない私達だったが、さすがにこの夏休みの間は、LINEや電話でのコミュニケーションがほとんどだった。
「そう言えばさ。」
「うん?」
「帰ってくるみたいよ、今日から。」
どこにでも耳の早い人はいるものだ。由夏がまさにそうで、誰それが誰と付き合い出したとか、別れたとか、あの先生がどうしたとか、私にいろんな話題を提供してくれる貴重な情報源だ。
「そうなんだ・・・。」
私は思わず、1学期の間、ずっと空いていた自分の隣の席に目をやる。
「帰って来るんだ、先輩。」
誰が帰って来るのか、私達の間では、わざわざ確認する必要もない。
「よかったね、悠。」
「うん・・・。」
冷やかすように言う由夏に言葉少なに答える私。
「どうしたの?あんまり嬉しそうじゃないじゃん。」
「別に嬉しくないわけじゃないけど・・・。」
隣の席が、先輩のだと知った時はビックリした。それに折角隣り合わせになれたのに、学校に来てないんじゃな、と残念に思ってたのは事実だけど。
「隣の席だからって先輩と絶対に親しくなれるわけじゃないし、もともと先輩と知り合いなわけでもないし。」
「なに、そのト-ンダウン。1学期の間、早く帰って来ないかなぁって口癖のように言ってたくせに。」
「うん・・・。」
「チャンスじゃない、絶対。地の利は悠にあり。」
我が事のように、テンションを高くしてる由夏の横で、私の心はイマイチ盛り上がらない。
そうこうしているうちにチャイムが鳴る。まずは講堂に移動して始業式、無駄に長い校長の話を聞き流して、教室に戻るまでの間、私は先輩の姿を探し求めたが、見つけることが出来なかった。
(やっぱり、まだ戻って来てないのかな?)
ガッカリしながら、そのくせちょっとホッとしたような複雑な気持ちで教室に戻ると、追いかけるように山上先生が姿を現した。
「おはよう。今日から2学期、また改めてよろしく。」
簡潔にそう挨拶した先生は、扉の外に向かって声を掛けた。
「いいぞ、入って来い。」
その声に扉が開き、入って来たのは、やっぱり・・・。
(先輩!)
間違いなく白鳥先輩、その人だった。先輩が入って来た瞬間、教室の空気が明らかに変わり、多くの生徒が息を呑んだのが、はっきりわかった。
(カッコいい・・・。)
かく言う私も1年ぶりに目の当たりにした先輩の姿に、ただ見惚れるばかりだった。
「白鳥徹です。事情があって休学してましたが、今日から復学することになりました。短い間ですが、よろしくお願いします。」
先生に促されて、挨拶をした後、私達に向かってペコリと頭を下げる先輩。
「ということだ。去年までは学年も違っていたから、ほとんどの者が白鳥とはしゃべったこともないだろうが、顔くらいは知ってる者は多いだろう。仲良くしてやってくれ。白鳥、一番後ろの空いてる席がお前の席だ。」
「はい。」
クラス中の視線を浴びながら、先輩は私の方に向かってくる。ドキドキしながらその姿を見ていた私に、先輩は軽く会釈すると、席に着いた。
(キャ-、私に向かって挨拶してくれた~。)
慌てて会釈を返しながら、私は1人舞い上がっていた。