Some Day ~夢に向かって~
その後の先生の話は簡単な事務連絡程度で終わり、この日は下校となった。
先生が教室を出るとほぼ同時に立ち上がった先輩に、2人の男子が近付いて来た。
「先輩!」
「お久しぶりです。」
「おぅ、しばらく。」
ずっと固かった先輩の表情が思わず緩む。
「2人とも、だいぶ髪が伸びてるじゃないか。」
「当たり前ですよ、もう2か月近く経ちますからね、最後の試合が終わってから。」
「そうか・・・そう言えば惜しかったな。もう1歩だったのにな。」
「いえ、力が足りませんでした。先輩達の後に続けなくて、すみませんでした。」
「そんなことねぇよ、みんなよくやったよ。」
「先輩・・・。」
先輩の言葉に、嬉しいような、でも悔しさを抑えられないような複雑な表情を見せる2人は、1人が沖田総一郎くん、もう1人が塚原聡志くん。ついこの間までエ-スと正捕手として、明協高校野球部を引っ張って来たバッテリ-だ。
「先輩、俺達のこと、気にしてくれてたんですね。」
「当たり前だ、可愛い後輩達の戦いぶりが、気にならないわけねぇだろ。」
「よかった、ひょっとしたら先輩は、もう野球を・・・。」
「沖田!」
何かを言いかけた沖田くんを慌てて制する塚原くん、私も思わず先輩の顔を見てしまった。気まずそうな2人に、だけど先輩は笑顔で言う。
「バカ、変な気遣うな。」
「先輩・・・。」
なんとも言えない表情を見せる2人の肩にポンと手を乗せると、先輩は言う。
「それにしても、ゴ-さんだけじゃなくて、お前達がいてくれて心強いよ。まぁよろしくお願いしますよ、お二方。」
そう言っていたずらっぽく笑う先輩に思わず、私の胸の鼓動は跳ねる。
「止めて下さいよ、でも先輩、今まで本当にどうしてたんですか?」
塚原くんの問いに、私も思わず耳をそばだてる。それは私も聞きたかったことだ。
「放浪してたのさ、色々と、悟りを開く為に。」
「それで開けたんですか?」
「まぁな。そんな話はどうでもいいじゃないか。それより、これから野球部に顔出して、監督やみんなに挨拶して来る。お前達も付き合えよ。」
「はい。」
そう言うと、先輩の命令は絶対とばかりにお付きの人のように後に従う沖田くんと塚原くんを引き連れて、先輩は教室を後にする。
(行っちゃった・・・。)
先輩に話し掛けたくて、周りにたむろしていた私や他の何人かの女子は、完全に肩透かし。為すすべなく、先輩の後ろを見送るしかなかった。
(やっぱり無理だよ、話し掛けるなんて・・・。)
私は思わず、ため息をついていた。
先生が教室を出るとほぼ同時に立ち上がった先輩に、2人の男子が近付いて来た。
「先輩!」
「お久しぶりです。」
「おぅ、しばらく。」
ずっと固かった先輩の表情が思わず緩む。
「2人とも、だいぶ髪が伸びてるじゃないか。」
「当たり前ですよ、もう2か月近く経ちますからね、最後の試合が終わってから。」
「そうか・・・そう言えば惜しかったな。もう1歩だったのにな。」
「いえ、力が足りませんでした。先輩達の後に続けなくて、すみませんでした。」
「そんなことねぇよ、みんなよくやったよ。」
「先輩・・・。」
先輩の言葉に、嬉しいような、でも悔しさを抑えられないような複雑な表情を見せる2人は、1人が沖田総一郎くん、もう1人が塚原聡志くん。ついこの間までエ-スと正捕手として、明協高校野球部を引っ張って来たバッテリ-だ。
「先輩、俺達のこと、気にしてくれてたんですね。」
「当たり前だ、可愛い後輩達の戦いぶりが、気にならないわけねぇだろ。」
「よかった、ひょっとしたら先輩は、もう野球を・・・。」
「沖田!」
何かを言いかけた沖田くんを慌てて制する塚原くん、私も思わず先輩の顔を見てしまった。気まずそうな2人に、だけど先輩は笑顔で言う。
「バカ、変な気遣うな。」
「先輩・・・。」
なんとも言えない表情を見せる2人の肩にポンと手を乗せると、先輩は言う。
「それにしても、ゴ-さんだけじゃなくて、お前達がいてくれて心強いよ。まぁよろしくお願いしますよ、お二方。」
そう言っていたずらっぽく笑う先輩に思わず、私の胸の鼓動は跳ねる。
「止めて下さいよ、でも先輩、今まで本当にどうしてたんですか?」
塚原くんの問いに、私も思わず耳をそばだてる。それは私も聞きたかったことだ。
「放浪してたのさ、色々と、悟りを開く為に。」
「それで開けたんですか?」
「まぁな。そんな話はどうでもいいじゃないか。それより、これから野球部に顔出して、監督やみんなに挨拶して来る。お前達も付き合えよ。」
「はい。」
そう言うと、先輩の命令は絶対とばかりにお付きの人のように後に従う沖田くんと塚原くんを引き連れて、先輩は教室を後にする。
(行っちゃった・・・。)
先輩に話し掛けたくて、周りにたむろしていた私や他の何人かの女子は、完全に肩透かし。為すすべなく、先輩の後ろを見送るしかなかった。
(やっぱり無理だよ、話し掛けるなんて・・・。)
私は思わず、ため息をついていた。