Some Day ~夢に向かって~
「それで、悠はなんて返事したの?」


翌日の昼休み、由夏を屋上に誘った私は、昨夜の先輩とのやり取りを報告する。


「返事なんか出来ないよ、あまりにも予想外のことを言われて。」


「だよねぇ・・・。」


私の正直な思いに同意してくれる由夏。


「先輩、何考えてるんだろうね?」


「わからないよ、私にも。」


本当に先輩の気持ちがわからない。後夜祭で先輩が私に言おうとしてた事が勉強のことだったとは、どうしても思えない。だとしたら、先輩はどうして「私に聞いて欲しいこと」を変えてしまったんだろう。


「突然気が変わったから、引っ込みつかなくなって、苦し紛れにそんなこと言い出したとか?」


「そんな~。」


「冗談だよ。でもさ、」


笑えない冗談に抗議の声を上げた私に、由夏はフォロ-に入る。


「加奈から聞いた通り、先輩が図書室に通ってたのは事実みたいだから。文化祭が終わって、試験も近くなって、焦った先輩が本当に悠にSOSを出したのかもしれないよ。」


「・・・。」


「考えてもみなよ。今はクラスメイトとは言え、普通、年下の子になかなか頼めないと思うよ、勉強教えてくれって。」


「由夏・・・。」


「でも、話が違うよって思う悠の気持ちは、わかるけどね。私だったら、何考えてるの?って、言っちゃうかもしれないし。そんなはっきりしないんなら、もういいって悠が思うなら、それでいいんじゃない?」


「・・・。」


「でも『水木にしか頼めないんだ』っていう先輩の言葉は、信じてもいいんじゃないかな?私はそんな気がする。」


「うん・・・。」


「どっちにしても、悠が決めることだよ。」


そう言ったあと、私の不安な気持ちを宥めるように、由夏は頷いて見せた。
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