Some Day ~夢に向かって~
「どうしたんですか、急に?」


入って2か月も経ってない予備校を、いよいよ受験勉強が佳境に入ろうとしている今、なんで辞めるのか、私には全く理解出来ない。


「今回の学校の定期試験はたぶんボロボロだろう。実は、この前の予備校の模試も恥ずかしながら、惨憺たる結果だった。」


「・・・。」


「自分なりに努力はして来たつもりなんだけど、現実はなかなか厳しい。10月も末になろうとしてるのに、こんな状態じゃ、話にならないと思う。」


「そんな・・・。」


「でも浪人はできない、したくない。ただでさえ、1年みんなから遅れてしまってるんだ、これ以上のロスタイムは、正直つらい。」


(そうか、先輩はやっぱり、同級生達に1年遅れてしまったことを、気に病んでるんだ・・・。)


先輩の本音が、私の胸をつく。


「無駄な努力・・・かもしれない。だけど、あと4か月足らず、あがいてみたい。」


「どうするんですか?」


「家庭教師、つけてもらおうと思う。親父に頭下げるのは、癪だけど、でも他にどうしようもない。」


「先輩・・・。」


「俺、親父と仲悪いんだ。普段、それこそほとんど口も利かないくらい。でも結局、今の俺は親に甘えなきゃ、どうにも前に進めない。悔しいけど。」


「・・・。」


「だから、こうやって水木と一緒に帰れるのも、後何回かになっちゃうなぁ。この時間を失うのは、つらいけど、でも出来たら、水木達と一緒に進学したいから。」


先輩はそう言うと、苦く笑った。
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