Some Day ~夢に向かって~
加瀬くんの思わぬ告白に動揺していた私は、ふと今の状況のまずさに気付いた。近寄って来る加瀬くんの様子に、ただならぬものを感じるけど、私はジリジリと後ずさることしか出来ない。


「水木さん!」


逃げ場がなくなり、ついに加瀬くんの腕の中にとじ込められそうになる私。


「いや、止めて!」


私は必死に抵抗するけど、男の子の力には・・・。


(助けて、先輩!)


届くはずもない声を心の中で上げた時だ。


「もうよせ、加瀬!」


響いて来た声は、残念ながら先輩のものではなかったけど、誰か来てくれたみたい。


「こんな所で、女の子と2人きりでその態度は、フェアじゃないぜ。」


(塚原くん・・・。)


ホッとした私の視界に入って来たのは、これまた意外な人だった。


「それじゃ、せっかくのお前の想いは水木には伝わんねぇよ。逆効果じゃねぇか。」


そう言いながら、近寄って来た塚原くんを、加瀬くんは睨み付けていたけど


「水木さん、ごめん。」


と私に言い残すと、走っていってしまった。


「大丈夫か?」


「うん、ありがとう・・・。」


あまりにも意外な成り行きに、すっかり動揺してしまったけど、塚原くんには感謝するしかない。


「あいつのやろうとしたことは褒められたことじゃないし、まして許されることでもない。」


「・・・。」


「だけど、加瀬は本気だぜ。それだけはわかってやれ。」


塚原くんのその言葉に、でも私は答えようがない。


「それにしても、ガ-ド固いのかと思ってたんだけど、案外呑気なんだな。」


「えっ?」


「呑気と言や、あの人もだけど。ま、似た者同士ってことか。」


「どう言う意味?」


「なんでもねぇ、さぁ行こうぜ、由夏が心配してるぜ、きっと。」


塚原くんの言ってることがさっぱりわからずに、キョトンとする私に苦笑いを浮かべると、彼は歩き出した。
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