Some Day ~夢に向かって~
動き出した時
「ねぇ悠、聞いた?」


朝、教室に飛び込んでくるなり、由夏が私に聞いて来た。


「どうしたの?」


「先輩が帰って来るんだって!」


えっ、由夏、どうしちゃったの?先輩は9月から一緒のクラスにいるじゃん。


きょとんとしている私の心の内なんかお見通しだと言わんばかりに由夏は続ける。


「松本省吾、11月22日、母校で凱旋講演。イエィ!」


そう叫んだ由夏の顔はメチャクチャ輝いていた。


11月も半ばに差し掛かろうとしていた。そんなある日、飛び込んで来たビッグニュ-ス。スマホを見てみると、確かに出ている。


松本省吾先輩。1年生の時から主力打者として活躍、白鳥先輩達と一緒に明協野球部の黄金期を築いた英雄。キャプテン、4番打者としてチ-ムを昨年夏の甲子園優勝に導いたのを置き土産に、昨年のドラフト会議で高校生としては過去最多の8球団から1位指名を受け、抽選の結果、プロ野球の名門Gに入団。


開幕から7番サ-ドで先発出場、やがて3番バッタ-に昇格して、近年低迷気味だったGの久々の日本一に大きく貢献。新人王を始めとした、いくつものタイトルも獲得した、我が校自慢のヒ-ロ-だ。


そんな大スターが母校の招きで、後輩達に講演にやって来る。由夏だけでなく、学校中が湧いたのは言うまでもない。


先輩はまだ来ていない。もうこのことを知ってるのかな?でもそれを確かめることは、今の私達の間では出来ないんだ・・・。
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