Some Day ~夢に向かって~
「ところで。」


松本が話題を変えるかのように切り出した。


「誕生日おめでとう。」


その松本の言葉に俺はちょっと意表をつかれた。


「覚えててくれたのか。」


「当たり前だ、毎年お祝いしてるんだから。去年だって、ちゃんとやったんだぜ。ご本人が行方不明でも。」


「そりゃどうも。」


高校に入ってから俺達はお互いの誕生日を祝い合っていた。場所はファミレスやハンバ-ガ-店ならいい方、大抵は部活帰りのコンビニ前だったけど。


それにしても、俺達は、我ながら恥ずかしくなるくらいの仲良し6人組だった、と今更ながら思う。


「実は何も俺の誕生日に来なくたって、とは思ってたんだよ。なんの当てつけだよって。」


「仕方ねぇじゃん、学校と球団で決めたことなんだから。」


もちろんそんなことはわかってるけど、ちょっと凹んでたのは確か。でも松本の話を聞いて、今また久しぶりにサシで話して、そんな気分はもう吹っ飛んだけど。


「今年はみんなでお祝いってわけにはいかないけど、プレゼントがある。」


「プレゼント?」


「そう、今の白鳥くんにたぶん1番喜んでもらえるプレゼントがね。」


突然別の方向から聞こえて来た声。驚いて振り向いたその先に立っていたのは、みどりと・・・。


「水木!」


うつむき加減に立っている水木の姿に、俺の心は思わず跳ねる。


「さぁ、俺達の出番はこれまで。みどり、行こう。」


「うん。」


そう言うと、歩き出す2人。


「なぁ・・・。」


「なんだよ、今日は俺は実家泊まりで門限気にしなくていいし、明日からは3連休。久しぶりにゆっくりデ-ト出来るんだ。邪魔するなよ。」


「白鳥くん、明日までの宿題、忘れないでね。じゃ、悠ちゃん、またね。」


笑顔でそう言い残すと、2人は仲睦まじく、寄り添うように行ってしまった。見せつけやがって・・・。
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