Some Day ~夢に向かって~
「ずっと水木に無視されてて、辛かった。理由がわからなかったから余計。」


「ごめんなさい。」


「いや、結局は自分のせいなんだよ。勇気がなくて、俺は本当に自分がすべきことから、逃げ回って来た。自分の気持ちに、向き合って来なかった。結果として、俺は手厳しい罰を受ける羽目になった。」


「そんなこと・・・。」


「受験が近いから、こんなこと言ったら迷惑かけるんじゃないか。もしうまく行ったら、俺はもう勉強が手につかなくなっちゃうんじゃないか・・・全部言い訳、君に自分の気持ちをぶつけることから逃げてただけ。雨が降ったから、告白止めちゃうなんてあり得ないよ。」


いつの間にか先輩と私の距離は、もうお互いの手の届く位置になっていた。


「でも、自分で言うことじゃないかもしれないけど、罰は十分受けた。もうたくさんだ。」


そこで一息入れた先輩は・・・


「悠。」


って、初めて私のことを呼んでくれた。


先輩、って呼び返したつもりだったけど、その声は実際には出て来なかった。私はただ、先輩の次の言葉を待つ。


「俺は悠が、好きだ。」


その言葉が耳に届いた瞬間、私は身体中の血液が沸騰して、爆発しちゃうんじゃないかと思った。


(確かに今、先輩は私のことを好きって・・・。)


「初めて会った時から、ずっと好きだった。もう誰にも渡したくない、渡さない。」


天にも昇る気持ちって、こういうことを言うんだろう。私は全身の力が抜けたように、立ち尽くしていた。


「悠。」


そんな私を先輩はそっと、その腕の中に閉じ込めてくれる。半ば茫然としながらも、先輩の感触にハッとした私は夢中でシャツを掴んで、その身を寄せて行く。


「やっと手に入れた。今年の誕生日、ぜってぇに忘れねぇから。」


つぶやく先輩の言葉が聞こえて来て、その言葉が本当に嬉しくて、涙があふれて来る。


(先輩、私も大好きです。もう先輩のこと、絶対に離しませんから。)


言葉に出せなくてごめんなさい。でも私は今、間違いなく世界一幸せだから・・・。
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