地下室のフィアンセ ~秘密を愛しすぎた獣~
「あのねぇ…」
女は男を睨んで言った。
「私はリサなんて名前じゃないわ。
それよりあなた誰なの?」
女は気丈な声で言った。
「リサさ、僕がそう決めたんだ。君はリサ………!」
男は女の首に手をかけた。
「僕はピエール。君のナイトさ。
大人しくしていれば君には一生の幸せを約束するよ。
でももし僕に歯むかうのなら、君をもっとすてきに縛り上げて自由を奪っちゃう……!!」
「はぁ?」
実に恐ろしい内容の返しをいただいた女だったが、なおも女は果敢に男を睨んだ。
「ふざけないでよ」
女は昔から肝が座っていた。彼女は普段、外科医をしており、患者の命を扱う仕事をしていたのだ。安い脅迫に屈するほど、弱い心の持ち主ではない。
それに女はピエールなどというふざけた名前を名乗る男がどうしても気に入らなかった。