無題 ~ グリンフォール~
フーンフーンフフフーン



マッドの、音痴な、鼻歌が聞こえる。



私は、鼻歌が聞こえた時、とっさに、机の下に隠れた。



そして、心を決めて、マッドに、話しかけた。




「おはようございます。マッド。」



あえて明るく言う。



「おはよう!今日は、気分がいいな。アリス。」



良さそうに、見えるでしょ?



「わぁー!クッキー!美味しそうな、“匂い”だね。」



「そうか?それは、良かった。」



照れている。




その時、マッドの手元が見えた。



小さな、小瓶がある。




「マッド。その小瓶。何が入ってるの?」



無邪気に聞いてみた。



ピシッと、固まってから、


解けたように、



「バニラエッセンスだよ。風味が増すんだよ。」



良くも、まぁ、そんな、ぬけぬけと、嘘がつけるね。



バニラエッセンスは、マッドの、上の棚に、あるじゃないか。



私は、


「そうなんだー。私、教会の扉、開けてくる。」



と言って、その場を立ち去った。





マッドが、嘘をついている以上、堕人の可能性は、高い。





マッドは、きっと、あの、“見極めの花”を使って、いい人材を探しているんだ。



勝手に、想像していることは、わかっている。


だけど、この可能性が、高い。





キィィィィー





重い、扉を開けた。




遠くに、子供たちがいるのがわかる。





でも、まだ30分ぐらいかかりそうだな…




私は、「地下で、調べ物をする」と、ウサギに、言って、地下に向かった。




私は、マッドが、危険だと判断して、ここから、逃げる方法を探した。



多分だけど、マッドは、近いうちに、“行動”を起こすと、思ったから。







やっぱり、都市部に、逃げるのが、一番だなぁ。



地図を見て、思う。




森を、横断すれば、30分で着く。




あの森は、一度探検しているし、森に住む、魔女とも仲良しだから、きっと、手を貸してくれる。






次に、連れていく人。



まずは、チェシャとウサギ。


エリックとアリエルは、勝手についてくるだろう。



問題は、女神。


まだ、なにか隠している。



それが、分かれば…





まぁ、置いておこう。


女神は、どっちにしろ、連れていけない。



泉から、離れすぎると、水になってしまうから。




次に、決行日。




今日が、27日だから、




あぁ、嘘でついた、29日にしよう。





これで、決まり。



あとは、自分ができる、魔法を、ノートにメモっておけばいい。




私は、図書室を、歩き回る。



癒しは、できるから…



バリアだなぁ…



バリアの、ことが書いてありそうな、棚の前まで行くと、私は、ノートを出した。





シールド…

大きめのサイズ、小さめのサイズ。



どんどん本を開いて、適応する呪文をノートに、移していく。




光魔法…



ライト



これがいい。


ライトの魔法を、私は、ノートにメモした。





えぇ、っと、次は、





「アリス?こんなところで、何しているんだ?」





ドクン!



波打った。







ま、ま、ま、ま、ま、



マッド!



なんでここに。




心の焦りとは、裏腹に、口からは、



「何か、用ですか?」




パタン。



ノートを、閉じた。





「あぁ、もうすぐで、子供たちが到着する。早く、上に来い。」




少し乱暴な、言いよう。




「わかりました。今行きます。」



私は、マッドと、一緒に階段を駆け上がった。
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