幼馴染みと、恋とか愛とか
何処でもいいとは言わなかった。
『接客業務のないところ』と限定して、それなら短期間でもいいですと言って勤めてたんだ。


窓口業務をしていた頃のように、ジロジロと体を見られるのが嫌だった。
派遣で働いてる時もお弁当派だったのは、社員食堂に行って人目に触れられるのが怖かったから。


だけど、奇しくも派遣が切られて、行くアテもなく途方に暮れた。
それなのに弟の蓮也が更に進学をする。
貯金も少ない自分が、のんびりと職探しも出来ない。


それで焦って紫苑を頼った。
勿論紫苑には銀行を辞めた理由を話せる訳もなく、両親にもずっと内緒にし続けている。


話せる訳がないんだ。

支店長に犯されそうになっただなんて。

変な人に待ち伏せされてて、怖い思いをしてたなんて、言いたくもない___。

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(何もかも忘れたいんだから)


そう思って何年もかかってる。
最近は少し傷が薄らいできた様な気がしてたけど、首藤さんを見てるとその傷を思い出して震えがくる。


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