幼馴染みと、恋とか愛とか
「俺の嫁になれよ」


「はぁぁ?」


「毎日弁当作るのが無理ならせめて手料理食わせろ。それには結婚が一番早い」


「あんた馬鹿?」


とうとう社長を馬鹿呼ばわりしてしまう。
心臓は紫苑の真面目な表情を見て、ドキン!と弾んだのに。


「折角のお申し出ですけど、私は誰とも結婚する気はありませんから」


食後のコーヒーを淹れてあげようかと思ってたけど止める。
これ以上紫苑に近付かれるのも嫌だし、嫁なんて…結婚なんて言葉も、冗談にも程があり過ぎる。


トン…と紫苑のお腹の辺りにカップを押し付け、それを紫苑が両手で掴んだのを見て逃げ去った。


バタン!と勢いよくドアを閉め、ズンズンと歩いて廊下を突っ切る。



(馬鹿、紫苑…)


いくら何でも突拍子過ぎる。
それに私が紫苑の嫁になんて、なれる訳もないのに。


(やっぱりどうかしてる)


兄妹みたいに育ってきた私達を誰もが夫婦として見る予定もないのに。


第一、私はあの支店長の件以来、男性が少し怖くて。

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