幼馴染みと、恋とか愛とか
「お疲れ様です……首藤さん」


ビクビクしてしまうのは、彼のことを怪しんでる所為。
それも自意識過剰だと自分に言い聞かせ、ドアの方に歩み寄る彼のことを視界に入れる。

長い指がドアレバーを掴む。
そのまま下げてさっさと出て行って。



「…あ、そうだ」


ぎくっと背中を仰け反らせそうになった。
私に目を向けてきた首藤さんは、人の良さそうな笑みを浮かべて。


「良かったら一緒にお茶しませんか?三橋さん」


自分は今から昼食です、と言いだし、「えっ、今から!?」と聞き返してしまう。


「社長の人使いが荒くて食べ損ねてたんです。三橋さんも少し早く仕事に入ったでしょ。コーヒーくらいは飲んでもバチ当たらなくないですか?」


最もそうな言葉を並べ立て、紫苑に向かって「いいですよね?」と確認を取ってる。
私はハッとして紫苑を見遣り、(断って!)と必死にテレパシーを送った。

でも__



「まあ、いいだろ」


紫苑の目線はパソコンのディスプレーに向かったままで、私が焦る表情をしてるのも、首藤さんがしてやったりという様な笑顔でいるのも見ていない。


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