幼馴染みと、恋とか愛とか
(こっちを見て!紫苑っ!)


私の恐怖に気づいて紫苑。
また体が震えてきそうで、怖くて怖くて仕様がないのに___。



「お許しが出たから行きましょうか」


「えっ…あの…」


私はコーヒーなんて飲みたくありません、とキッパリ断りたくても声に出せない。


「さあ、どうぞ」


レディファーストのようにドアを開かれ、足を向けたくもなかったのに。


ぎゅっと唇を噛んで前に進んだ。
私が動かなければ、首藤さんの手が伸びてくるかもしれないと思ったからだ。



「ちょっと行ってきます。し…社長…」


紫苑と呼んでしまいたかった。
呼べばきっと彼はこっちを振り向いてくれると思ったから。



「おー、いいぞ」


紫苑は変わらず目線を向けない。
このドアを閉じられた後のことを考えながら、息を吐いて歩み出た。


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