幼馴染みと、恋とか愛とか
「あらいいわよ。タクシーなんて幾らでも走ってるし直ぐに捕まるわ。でも、退社する前には連絡させるわね。でないと紫苑君も仕事に集中出来ないでしょうから」


後は自分に任せて大丈夫だと言い、紫苑は「お願いします」と頭を下げてこっちを見下ろす。

私は神妙そうな彼に見られてるのが嫌で、恥ずかしくもあって、両手で掛け布団を鼻の上辺りまで引っ張り上げた。


「お早くどうぞ」


他人行儀にせっつくと紫苑は目を伏せて出て行く。
母は紫苑を追って部屋の外まで送り、戻ってくると再びベッドサイドの椅子に座った。


「何があったのかは紫苑君から聞いたけど……大丈夫?」


女性として怖さが分かるように訊かれ、こくっと頷いた。


「紫苑君、かなり憤慨してて相手の人を解雇するって怒ってたわ」


「えっ!解雇!?」


驚いて布団を引き下げた。
目を見開いて母を見ると、困ったような表情をしていて。


「私も紫苑君にそこまでしなくても…と言ったんだけど、許せそうになくてね」


「でも…首藤さんは…」


紫苑のオフィスでは欠かせない戦略の要だ。
それなのに解雇なんてしたら駄目。


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