幼馴染みと、恋とか愛とか
「その人、首藤さんと言うの?残念だけど本気で紫苑君を怒らせてたみたいよ。
……あの子、昔から萌音が大事だから。一番の味方だし、救世主だしね」


母は紫苑を子供のように「あの子」と呼び、幼い頃を思い出したように微笑む。


「今もきっと、持ち前の正義感で怒りが頂点に達してるだけだと思うの。
萌音がそこまでしなくてもいいと紫苑君に言ってあげれば、考え直すんじゃない?」


そうすれば?と訊ねる母に一応は頷く。
でも、首藤さんがいるオフィスで自分が平気で働き直せるかと問われると不安の方が大きい。


「もう少し休んでおくでしょ。その間にお父さんに連絡してくるから」


私が働いてるオフィスが紫苑の経営する会社だと知ったら、父もきっと驚いて目を剥くわね…と母は微笑みながら部屋を出た。


部屋に残された私に白衣の女性は、此処がビルの中にある医務室だと教えてくれた。

自分はこのビルに常駐する産業医で、呼びに来たのは、さっきの社長さんの部下だと説明した。


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