幼馴染みと、恋とか愛とか
面接の話を聞いてやって来たの?と振り向く人に指を伸ばしながら聞けば、紫苑は若干呆れ顔でいて、ソファへ近付いて来ながら「そりゃ…」と言い出す。


「どうしてって、この会社の社長が俺だからだろ」


手には私が持参してきた履歴書を握っている。
こっちは唖然としたまま自分の向かい側に座ろうとする紫苑を見つめ、直ぐにでも退散!といきたかったんだけど__


「まあいいから座れよ」


社長というよりかは幼馴染みの雰囲気のままで手をゆらゆらと上下させるもんだから、つい腰が抜けた…と言うか、膝の力が抜けてしまい……。



「どういう事よ」


ソファに座り直すと凡そ社長に対する一声とは思えない感じで訊ね、「騙してるの!?」と眉間に皺を寄せて睨み付けた。


「別に騙してなんかないが」


紫苑は手にしている履歴書を眺めながら答える。


「嘘っ!自分の会社だって一言も言わなかったじゃない!」


「如何にも自分の知り合いのオフィスみたいに言って〜!」と恨み言のように吠えると、「それは嘘じゃなく、ただ黙ってただけだ」と開き直ってくる。

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