幼馴染みと、恋とか愛とか
「おかえり」


人の部屋だというのに我が家のように言ってしまう。
紫苑もそこを突っ込んでくれればいいのに、平然とした感じで「ただいま」と返してくる。


これまではオフィスで日常的に繰り返してきた挨拶も、何故かプライベートだと緊張する。

おかげで変な汗もかいてきそうで、誤魔化すように段ボール箱の中身を取り出して訊いた。



「本当に今日から此処に住むの?」


私も?という思いを込めて訊ねると、紫苑は「そうだ」と首を縦に振る。


「だから着替えを持って来させたんだろ」


やっぱり私と二人で住むのが前提なんだな…と思えて、ますます(えっ!?どうしてそうなるの!?)という気分が高まってくる。


私はまだ紫苑が完全に大丈夫な訳じゃないのに。
触れられたらいつ拒絶してもおかしくない気配なのに。


(紫苑はそれでも私と一緒に居たいの?)


声に出せない分、視線を送った。
じっと見てるのも嫌だから、取りあえずは黙々と作業した。


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