幼馴染みと、恋とか愛とか
「ざるそばが食いたい」


書斎を片付けてた紫苑がリビングに来て言った。


「何時?」


「十二時半だ」


時計も確認せずに作業してたからか、「もうそんな時間!?」と驚いた。


「萌音、ざるそば作ってくれよ」


「簡単に言うわね」


材料はあるの?と聞けば、昨日の帰りに買っておいたと冷蔵庫を指差す。

どうやら昨夜のうちから此処に住むことを決めてたらしく、変に用意周到だな…と思いつつ扉を開けた。



「これ何よ」


冷蔵庫の中には、そばと麺つゆとネギしか入ってない。
どう見てもファミリーサイズの冷蔵庫の中身がこれだけというのもどういうの?!


「後で萌音と買いに行けばいいかと思ってたんだよ。新婚みたいで楽しいだろ。それで」


新婚という言葉を平気で吐く彼に胸を打たれるどころか益々呆れ返り、「あ、そ」と適当にあしらった。

私にあしらわれても紫苑は全く動じず、鍋も一応あると流しの扉を開けながら教えてくれたんだが。


「あっ、しまった。ザルがない!」


肝心な物を買い忘れた…と口にする彼に呆れ、思わずくっと笑いかける。

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