幼馴染みと、恋とか愛とか
これも紫苑の手だと思うから下手に乗っちゃいけないと思うのに、有能な社長ぶりばかりを見てきたせいか、どうにも我慢が出来ず__。



「駄目じゃん」


そう言いながら笑い出してしまう。
緊張してた気持ちも何処かに飛んでいって、お腹を抱えて声を上げた。


「笑ってないで作れよ」


紫苑は仏頂面で言い渡してきて、苦笑しながら「はいはい」と二度返事。

側で作るのを見ると言う紫苑に、ざるそばの時は茹で麺よりも乾麺の方がいいよ…と教えながら、鍋に水を張って電磁調理器の上に乗せる。

オール電化だから便利だね…と話しかけようとして振り向くと、思ってる以上に紫苑が近くに寄ってたからビクッとなった。


一瞬声が出せずに固まる。
そんな私のことに気づいた紫苑が、少し距離を置くように離れた。


「一応乾杯もするつもりでアルコールも買ってるんだ」


ビールとワインと日本酒…と嬉しそうに話すんだが、私は表情が凝り固まってて。


「そう」


それ以外の言葉も出せずに俯く。

沈黙しそうな気配もじきに沸き出した鍋の湯に助けられ、その後は蕎麦を湯通ししたりして気分を紛らわせた。


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