幼馴染みと、恋とか愛とか
「ざるそばじゃないけど」


深皿に麺つゆを張り、茹でた蕎麦を洗って乗せただけ。

ネギ以外にも海苔があれば良かったね…と話すと、紫苑は「腹に入ってしまえば何でも一緒だ」と言い返して食べ始めた。


ズルズルと麺を啜る音と時々ごくっと飲み込む嚥下の音しかしない。

二人だけの空間がこんなにも無音に近いとどうかある。

余計に緊張が増すな…と思いながら蕎麦を飲み込み、それが段々と喉に詰まりそうだなと感じたから手を止めた。



「どうした」


蕎麦をすっかり食べ終えた紫苑が訊ねてくる。
私は「うん…」と項垂れて、「もういらない」と声にした。


「じゃあ俺が食べてやるよ」


紫苑は遠慮もなく私の手から器を取り上げ、ズルズルと蕎麦を食べ始める。

それは子供の頃にも何度かあった光景だけど、大人になった今見ると、改めて間接キスだと分かって顔が熱くなった。


さっきから青くなったり赤くなったり、どうにも忙しい私。

多分こんなに紫苑を身近に感じることがなかったからだ…と思い、こんな調子で二人だけで生活しだしても大丈夫なのかな…と心配が走る。


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