幼馴染みと、恋とか愛とか
「引かねえよ」


声と同時に瞼がぱちっと開いてビクッとする。
茶色の瞳が私を見ていて、慌てて背中を仰け反らせた。


「何処にも行くなよ」


紫苑はぎゅっと右手首を握り、そのまま、また目を閉じてしまう。
そして、唇だけを開いて眠そうな声を発した。


「夕飯の時みたいにヘラヘラ笑ってたらいい。リラックスしてて大丈夫だから……」


「ヘラヘラ?」


してたっけ…と振り返ってるうちに、スースーと寝息が聞こえてくる。
どうも紫苑は言った側から睡魔には勝てなかったらしく、再び眠りについてしまったようだ。

私は一瞬目を見開いて呆気に取られたが、呑気そうに寝入ってる顔を見ると妙に安心もしてきて……。


「リラックスか」


紫苑がこれだけ寝入れるのもリラックスしてる所為か。
私は不安ばかりを感じてたけど、紫苑は全く違うんだな。


「紫苑…」


ぎゅっと握られた手首の温もりが怖さとは違ってホッとしてる。

紫苑に触れられるのはまだ慣れないけど、そのうちこの手で触れられても全く動じない日が来るのかな。


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