幼馴染みと、恋とか愛とか
紫苑の家族と一緒によく海水浴やプールへ行った。
キャンプも一緒にしたし、そういう時は夜に花火もして遊んだ。


小学校の自由研究の為に…と昆虫採集する紫苑にも付き合った。
クワガタやカブトムシを見つけては、二人で喜んで観たもんだ。


夏の思い出はそれだけじゃない。
花火大会や盆踊り大会。
共通の思い出が多過ぎて胸がきゅっと狭まる。

大人になって紫苑と二人だけの夏は、やっぱり何処か緊張する。
時間が経ってしまったんだな…と感じる。


「浜辺に下りてみよう。萌音は貝殻探すのが好きだったろ」


紫苑も昔を思い出してたのか、そう言って歩き出した。
うん…と声に出して後を追い、砂に足が埋まりそうになってよろめいた。


「気をつけろよ」


振り向いた紫苑がそう言って手を伸ばしてくる。
「捕まえとけ」と言うから躊躇った。


「何もしねえよ。こんな昼間っから」


寝呆けながら「リラックスしとけ」と言った言葉を思い出した。
紫苑は兄みたいな存在だった…と改めて感じて、指先を掌の上に沿わせる。

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