幼馴染みと、恋とか愛とか
その途端、ぎゅっと力を入れて握られた。
ビクッとしたけど直ぐに歩き出す紫苑に歩調を合わせた。


子供の頃と同じじゃないんだ。
紫苑はやっぱり兄じゃない……。


そう思うと胸が苦しくて。
何だか急にドキドキする。

手しか繋いでないのにおかしい。
私の方が紫苑を変に意識してるの?


紫苑は何も感じない?
私の手を握っても何も思ったりしないの?


背中を見つめたまま無言になる。
そのうち砂浜に着いた紫苑が前屈みになり、何かを拾い上げると振り向いた。


「ほら見ろ。デカい巻貝見つけた」


棘のように尖った縦長の貝殻を見せて笑う。
目元はサングラスで見え難いけど、口元は口角が上がってて白い歯が見えてる。

それを私の掌に乗せて、次から次へと見つけてはくれる。
持ちきれなくなったら、両手で持てと言われて手を離された。


何だか急に寂しくなった。
紫苑の手が離れていくことが不安で、昨日とはまるで逆だと感じた。


「萌音?」


私が呆然と紫苑を見上げてたからだろうか、気づいた紫苑が名前を呼ぶ。

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